最終的には大団円を迎えた大河ファンタジー『精霊の守り人』感想

大河ファンタジーと銘打ってNHKでドラマ化された作品。

この1月に最終回を迎え、終わってみれば良作でした。

が、視聴率には恵まれず・・。

その理由も何となく分かるような、なんとももったいない作品だったのも確かです。



原作は国際アンデルセン賞を受賞したことで有名な上橋菜穂子先生の「守り人シリーズ」。

骨太ファンタジーの傑作なので、未読の方にはぜひご一読いただきたいです。

 

 

今回の実写化で主役であるバルサを演じたのは、綾瀬はるか。

バルサは原作第一巻の冒頭で「中年」と称される女用心棒であり、

(バルサも心優しい女性ではあるのですが)おっとりふんわりの綾瀬はるかの印象とは正反対。

そんなキャスティングが発表された際に、原作者である上橋菜穂子先生が出されたコメントが心に残っています。

原作読者の中には、綾瀬はるかさんのような若くてきれいな人がバルサを演じることを疑問に思う方もおられるかもしれませんね。でも、綾瀬さんは、今年、バルサと同じ30歳です。確かに、シーズン1では、成熟したバルサというより、少年のようなバルサですが、ここには、ひとつの意図があるのです。
このドラマは、3年かけて放送されます。原作のバルサは、登場時すでにかなり成熟している “オバサン”ともいえる大人の女性ですが、そこからのスタートだと“伸びしろ”がないのです。バルサがまだ若々しく粗削りなところからドラマがスタートしたほうが、その後、子どもたちを守ることで、自分自身も変化し、成長していくおもしろさがあるのではという制作側のお話でした。そう伺って脚本を読ませていただくと、なるほど、確かにそれは3年という歳月をかけて放送するドラマならではだと納得したのです。

出典:NHK大河ファンタジー「精霊の守り人」公式サイト

 

当時、原作者である上橋菜穂子先生は、我々の不安に対し、このようなメッセージを寄せてくれていました。

また、バルサを演じる上で一番重視したいのは身体能力であり、

(実は運動神経抜群の)綾瀬はるかに期待しているとも。

 

果たして、最終章を終えて振り返ってみれば、彼女の予言どおりとなったことは明らかです。

 

確かに、3年前のシリーズ冒頭は、

地声が高めの綾瀬はるかが無理やり低い声で話す姿や、

色黒設定のバルサのためにファンデーションか何かで無理やり肌の色を暗くした姿に違和感を覚えずにはいられませんでした。

 

が、3年の時を経て、最終章を演じる彼女には、

低い声のトーン、落ち着き払ったバルサの風格がしっくり馴染んでおり、

闇の守り人という、原作の中でも一番バルサの内面に踏み込んだストーリーを、しっかりと演じてくれました。

 

また、運動神経で選ばれただけあり、毎回毎回身のこなしや殺陣が見事。

最終章の目玉である「槍舞い」も美しいとしか言いようがありません。

 

綾瀬はるかのほかにも、成長後のチャグムを演じた板垣瑞生の演技も見事。

若者らしさと、国を背負う皇太子としての使命感をさわやかに演じています。

 

更にほかにも、高島礼子や鈴木亮平、林遣都など、

NHKでおなじみの実力派俳優が好演しているのですが・・。

 

視聴率的な意味での敗因は、

やはりファンタジー色が強すぎるためのとっつきにくさと、

足掛け3年という放送期間の長さがあったと思います。

 

ファンタジーの中でも、本作は宗教色を強く感じるシーンが多い作品です。

特に、チャグムが皇太子として存在する「新ヨゴ国」は、

神の子である「帝」が神の力により統治する国。

とっつきずらいことこの上ない。

 

そのうえ帝を演じる藤原竜也が怪演この上ない。

初見の方がヒエッ・・となってしまっても仕方ないのではないでしょうか・・。

 

また、3シーズンを経て徐々に良くなったとはいっても、

肝心のファーストシーズンで脱落してしまった人たちは、

2年目、3年目で戻ってきづらいだろうし、途中参戦は更にハードルが高そうです。

 

また、シリーズを通して一番完成度が高かった最終章ですが、

1,2年目でナレーション、劇中音を担当していた山崎阿弥さんが起用されていないのが残念。

とても人間離れした声の持ち主で、幻想的な世界観を見事に盛り上げてくれていました。

アニメ『精霊の守り人』はAmazonプライムで視聴可能です

 

おすすめ度★★★☆☆(3.5点/5点満点)

この作品が好きな人におすすめの作品
→原作小説、『十二国記』(アニメ・小説とも)

この作品をおすすめしたい人
→綾瀬はるかのアクションが好きな人

(余談)

原作小説はファンタジー繋がりで『十二国記』シリーズと並べて評されることが多く、ファン層もかぶっていたりもするのだが、それぞれ違った魅力を持っています。

私はどちらかというと十二国記ファンですが、『守り人』シリーズ最大の魅力は、一石の石を投じて、その波紋が波紋を呼び、大きな波になっていく様を描く手法でしょう。

この手法は上橋先生の十八番といえると思いますが、

守り人シリーズにおける

この世(サグ)とあの世(ナユグ)が重なり合い、互いに影響しあっているという世界観が、

彼女の手法とマッチし、最大の効果を生んでいると感じます。

十二国記でいうと、三人娘の話(「風の万里 黎明の空」)が好きな人にオススメの作品です。

 

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