何個か前の月9『貴族探偵』の原作者である麻耶雄嵩氏の作品です。
麻耶雄嵩氏のことは『貴族探偵』がドラマ化されるまでは知らなかったのですが、ドラマ化決定当時のtwitter界隈の様子をみると、一部のミステリファンから根強い人気があるらしいことが伺えます。
が、ドラマを見ても一体どの辺りが「麻耶雄嵩らしさ」なのかがよくわからなかったので、氏の小説を読んでみることにしました。
※ドラマ自体は、武井咲、井川遥、加藤あい・・といった美女の競演と、実力派俳優陣のコミカルな演技を楽しめて大変良かったです
※あと、木南晴夏のぶっ飛んだお嬢様キャラが滅茶苦茶ハマってて最高でした
※貴族探偵はFODプレミアムで視聴可能です。今なら無料おためしキャンペーン中
さて、最低2作は読まないと「作者らしさ」は分からないだろう、ということでネット上で評判が良さそうな表題二作をチョイスです。
『翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件』
『神様ゲーム』
両作品とも前知識は一切なしで読み始めます。
『神様ゲーム』は字が大きく、サラサラ読めそう。
対して『翼ある闇』は文字が小さく一ページに上下二段構成で、ちょっと読書意欲が薄れる感じ。
後から調べたら『翼ある闇』がデビュー作だそうで、本来こちらから読むべきだったかもしれなのですが、読みやすそうな『神様ゲーム』から手を付けました。
『神様ゲーム』が読みやすそうに感じたのは、それもそのはず。
この作品、児童向け推理小説なのだそう。
読み終わって思いますが・・・。
ええぇ・・・これが児童向け・・・。
絶対子供に読ませたくない・・・。
以下、あらすじ(途中まで)
主人公は小学四年生の男の子。
彼の住む町では猫の不審死が続いていた。
彼は同級生と少年探偵団を結成していて、この猫殺しの犯人を捜そうとしている。
一方、彼は学校ではトイレ掃除当番を割り当てられており、ペアとなったのは謎の転校生「鈴木太郎」。
鈴木君は、自称「神」。
自称「神」は全知全能で、だから猫殺しの犯人も、学校内で行われている不倫も、主人公である「僕」が死ぬタイミングも全てお見通し。
最初は「神様ゲーム」なんだろうと付き合っていた「僕」も、鈴木君の言葉を裏付ける状況が続き、次第に鈴木君が本当の「神様」であることを信じざるを得なくなっていく。
そんな中、同級生が殺されて・・
以下、ネタバレ感想です。
登場人物を説明するのが面倒くさい分かりにくいので、置き換えて分かりやすく説明します!
主人公(僕)=光彦
自称神(鈴木君)=コナンくん
少年探偵団のみんなで猫殺しの犯人を突き止めようとアレコレしていたら、なんと元太君が殺された!
元太君を殺したのはまさかのあゆみちゃん!
あゆみちゃんには共犯者がいて、
その共犯者はなんと光彦パパ!!
ちなみに光彦パパは警察官!!!
実は光彦パパとあゆみちゃんは、
そういう関係だったのだ・・!
二人がそういうことをいたしている場面を目撃してしまった元太くんは、口封じのために殺されてしまったのだった・・。
全ての真相をひとり察した光彦は、コナン君に「共犯者に天罰を」と依頼する。
ところが、天罰が下ったのはなんと光彦ママ!!
あゆみちゃんとそういう関係だったのは、
実は光彦ママの方だった・・・!
というなんとまあショッキングなあらすじ。
こんなの子供に読ませたくない。
人が死んでしまうのは、ミステリというジャンル上仕方がない部分だと思います。
殺人事件が起こるのを大前提で読んでいる場合が多いわけですし。
なので、事件が起こったことよりも、中学生である主人公の同級生と「親」がそんな関係だったというオチの方がショッキングで・・。
この作品をわざわざ児童向けに書かなくても良かったのでは、と思わざるを得ないです・・。
所感
それっぽい“解答”にミスリードしておきつつ、最後の最後でその線とは結びつかない「絶対的な事実」を提示することで推理を破綻させてしまう。
読者はそこを起点に翻って、その事実にそぐう解釈(真実)を導きださなければいけない。
この構成はとても面白かったです。
また、鈴木君を真実「神」と認めるか否かで、ロジックで浮かび上がる真実が変わる、という試みも面白いと感じました。
ただ、真犯人である二人の接点が薄く、共犯者の正体には唐突感というか、こじつけ感があるかなあと感じます。
たしかにショッキングではありますが・・。
ただ、さくっと読めるので、どんでん返しの驚きとか、チャレンジングな構成を楽しみたい人は読んでみてよいと思います。
長くなったので、『翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件』の感想は次回に続きます。
おすすめ度★★★☆☆(3.5点/5点満点)
この作品が好きな人におすすめの作品
→『リピート』乾くるみ
※ストーリーを楽しむというより、作者の試みを楽しむという点で
この作品をおすすめしたい人
→大人
→どんでん返し系の作品が好きな人